今でも想うこと
あきが聞き分けよくケージに閉じ込められてると、
なんだか不安になる…。
*
会社に行くときだけは、
長時間の留守番が心配で、はなもケージに閉じ込めていた。
ワタシが部屋を出ようとすると、
はなは扉の前に静かに座り込み、ただひたすらにワタシを目で追った。
そんなはなが可愛くて、後ろ髪を引かれすぎて。
朝から出勤しにくくなり、いつからか家を出る直前にペレットをあげるようになった。
はながペレットに夢中になっている隙に、ワタシはそっと部屋を出る。
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あきにそんな心配はいらない。
朝のへやんぽで騒ぎ疲れて、ワタシが部屋を出る頃には寝そべっているから。
だけどここ最近、あきもはなと同じことをする。
ワタシが部屋を出ようとすると、いつの間にか扉の前に張り付いて、
静かに座り、ずっとワタシを見ている。
はなにソックリな子を連れて来て、はなのケージに閉じ込めている。
ワタシは頭がおかしくなったのだろうか。
***
ある人に言われた。
最近あき、はなに似てきたね。
何を言っているんだろう。
あきは始めからはなに似てるよ。
いや、顔の話じゃなくてさ。仕草というか、態度と言うか…。
まぁ、育ててる人間が同じなんだから、似ても不思議じゃないけど。
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【安楽死】という言葉を発する飼い主がいることに驚いた。
ワタシははなに対して、そんなの思いつきもしなかった。
痛い・苦しい状態が続くのは、折檻しているみたいだと言っていた。
点滴治療を開始して、わずか3日目のことだった。
どうしてそんな事が言えるんだろう?と疑問に思った。
獣医さんは答えていた。
【こういう会話を、この子が聞いているんです】と。
飼い主は押し黙っていた。
この飼い主は、動物が日本語で会話できたとしても、
本人の目の前で同じことを言えたのだろうか。
はなだって老衰で死んだわけじゃない。
病気で死んだ。痛みに耐えながら死んでしまった。
小さな体で痛みに耐える姿は、見ていて確かに辛い。
折檻しているような気持ちになるのもわかる。
でも、だから安楽死っていうのは自分のためじゃないんだろうか。
痛みに耐える姿を見ている自分が辛くて、終わりにしたいだけじゃないんだろうか。
それともはなは、痛くて辛くて早く死にたかったのだろうか。
ワタシのエゴで痛くて辛い時間がただ伸びてしまっただけなのだろうか。
折檻されたと思っていたのだろうか。
【安楽死】を否定したいわけじゃない。
ただわからないのだ。
どちらが正解なのか。どちらが正しいのか。どちらが良かったのか…。
ワタシは間違っていたのだろうか。
今でも想っている。
はなにもっと長生きしてほしかった。
たとえ病気でも、1日でも長く一緒に過ごしたかった。
獣医さんも、まだわからないのだと言っていた。
心の整理がついていないのだと。
それを聞いて、少しだけホッとした。
ワタシより長く生きて、ワタシより沢山の死を経験していて。
それを仕事にしていて、専門家で…。
そんな人でも、まだ答えに出会っていないのだ。
ワタシなんかにわからなくて当たり前。
一生考え続けても、一生答えなんてわからないのかもしれない。
後悔のない答えなんてあるのだろうか。
ワタシにはわからない…。
*****
好奇心いっぱいの瞳をキラキラさせて、楽しそうに部屋中を走り回るあきの姿は、
いつもワタシを楽しい気持ちにさせてくれる。
それだけは間違いない。